2021/12/02 : 待合の本のご紹介 「対人関係療法でなおす気分変調性障害」
「うつ病」という言葉を聞いたことがないという方はほとんどいないと思いますが、「気分変調性障害」という病名は、初めて聞いたという方も多いかもしれません。「気分変調性障害」(気分変調症)は、「慢性うつ病」とだいたい同じ意味だと思ってもらって良いです。
「私はダメな人間だ・・・。」
「人生なんて苦しいのが当たり前。気分が晴れたことなんてここ最近ほとんどない。」
長い期間(診断基準では2年以上)、そのように感じている方にぜひ手にとって欲しいのが、水島広子先生が書かれた「対人関係療法でなおす気分変調性障害」です。
気分変調性障害というのは、「性格」ではなく、「疾患」で、治療可能なものです。物心ついた頃からずっとそうだとしても、です。ただ、患者さん本人も周りの人も、たいてい「この人は昔からこういう性格」と思ってしまっています。
この「対人関係療法でなおす気分変調性障害」を読んでいただくと、「性格だから治らない」という認識から「治りうる疾患である」という理解に変わるのではないかなと思います。
また、気分変調性疾患をなおすために意識した方が良いことなども書かれています。かいつまんでいうと、上記に書いてあるような「性格ではなく疾患であることを理解し、症状(自分をいじめるような考えが出てきた、など)が出てきたら気付けること」「自分の感情を(ネガティブな感情も含めて)認めること」などです。これは本の中でも書いてありますが、1人で行うのはなかなか難しいことです。1人だけで取り組もうとすると、「知識としては理解したんだけど・・・」というところで止まってしまうかもしれません。
そのため、患者さんにはぜひ、誰かと一緒にこの本の内容に取り組んでもらう(ネガティブな感情も含めて聞いてもらったり、症状が出てきたときには教えてもらったりするなど)ことをお勧めします。
近くに信頼できる人がいる場合には、その人に本を読んでもらうというのでもいいですし、協力してくれる人がいない場合は、精神科・心療内科を受診して、主治医と一緒に取り組んでいくというのが良いかと思います。主治医に対して、ネガティブな感情も含めて聞いてもらったり、「ネガティブな考え方」「自分をいじめるような考え方」といった症状について話し合ったりすることで、症状を改善させる方向に取り組んでいくことができます。
りさ杁中こころのクリニック 院長
今井理紗